続・信じ抜く慈愛

 この夏は酷暑が続いていましたが、厳しい暑さも時折和らぐようになり、いよいよ2学期がスタートしました。ただ、夏休み明け前後は、子どもたちに心の変調が表れやすい時期でもあります。その結果、学校に行きづらくなり、登校せずに自宅で過ごす子が見られるようになります。
 私の知り合いにも、学校に行きづらくなったお子さんをお持ちの方がいます。そのうちお二人から、同じようなお子さんをお持ちの方々の参考になればと、これまでの経緯と現在の状況を伺うことができました。ご本人の許可をいただいたうえで、その内容をお伝えします。

 お一人のお子さんは、ほとんど小学校に登校せず、家で過ごしています。お母さんが「どうして学校に行かないの?」と尋ねても、「なんとなく行きたくない」としか返事がありません。担任の先生に確認しても、学校でのトラブルは特にないとのことです。また、お子さんの様子を見ても、友だち関係で悩んでいるようには見えません。お母さんの話では、テレワークをしていることが多いため、お子さんも家にいる方が居心地良く感じているのではないかとのことです。
 親としては、もちろん毎日学校に行ってほしいと思うのは当然です。しかし、「この試練はこの子にとって意味があるものであり、必ずより良い方向に向かう」と信じて、担任の先生と授業内容について連絡を取りながら、親子でオンラインを通じて粘り強く家庭学習に取り組んでいます。

 もう一人のお子さんは、小学生の頃からあまり学校に行けず、中学生になっても同様の状態が続いていました。学校に行けない理由の一つは、朝いつも目覚めるのが遅く、その結果、行くのが面倒に感じてしまうからでした。しかし、お子さんには興味を持っていることがありました。それは、小学生の時に始めたバドミントンです。このことに着目したお父さんは、中学校でバドミントン部に参加することを提案しました。その結果、お子さんは「クラブ活動をしたい」という意欲が湧き、中学校に通えるようになりました。
 ところが、真夏のある日、クラブ活動中に突然体育館で倒れ、救急車で運ばれたとの連絡が学校からお母さんに入りました。先生やお母さんは「きっと、熱中症に違いない」と思っていたのですが、搬送先の病院で診察を受けた結果、「自律神経がうまく調整できず、乱れが生じることがある」という診断が下されました。さらに医師は、「朝、決まった時刻に起きるのが難しくありませんか?」と尋ねました。その言葉を聞いたお母さんは、「あ、そうか。朝起きることができないのはそのためだったのか」と初めて気づいたのです。それからは、この子が抱えている身体の不調と真正面から向き合い、学校や医療機関と連携を図っています。同時に、「この試練を乗り越えることで、この子の可能性は必ず開花する」と信じ、日々親子で粘り強く歩んでいます。そして、お父さんがしみじみと、次のように語られました。

─── これまでは、学校に行くことが当たり前だと思い、「どうして学校に行かないのか」と厳しく叱ったこともありました。しかし、子どもが学校に行けないのは、身体的な問題や、子どもを取り巻く社会環境の変化などが大きく影響していると思えるようになりました。これからは、子どもとしっかり向き合いながら、ゆっくり焦らずに、一緒に歩んでいこうと思っています。 ───

 ここで紹介したお話は、お二人のお子さんの例であり、どの子どもにも当てはまるわけではありません。また、学校に行きづらい要因は多様かつ複雑であり、決して一言で語れるものではないと思います。しかし、お話を伺ったお二人の保護者に共通することがあります。それは、「どこまでも、お子さんの可能性を信じ抜き、あたたかな慈愛の眼差しで一緒に歩んでいる」ことです。この「尊くも麗しい親子の毎日の歩み」は、必ずや子どもの未来を切り拓くと確信しています。

 早くも、栗の実ができはじめました。季節は実りの秋に向かっています。子どもたちの人生も、実り多きものになることを切に願います。

 ~ “ゆっくり焦らずに”と、親子にエールをおくる日 ~  (勝)

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