新年度が始まり、早や一か月が過ぎました。学校では教職員と子どもたちとの新たな出会いが生まれ、絆を深めていることと思います。この出会いを大切にして、昨年度よりも一層、「子どものための学校づくり」に邁進されることを願っています。
先日、ある小学校を訪問しました。校長室で懇談していたところ、入学したばかりの5~6名の1年生がやってきました。校内各施設の場所を覚えるため、新入生が担任と一緒に校内の施設めぐりをする「学校探検」を行っていたのです。
「こうちょうせんせい、しつれいします」
「どうぞ、入ってください」
「うわぁ!これが校長室か。すごいな!すごいな!」
「また、いつ来てもいいですよ」
子どもたちは、幼稚園・保育園とは違った校長室の雰囲気にとても感動したようでした。そして、終始にこやかに接しておられた校長先生に、笑顔で応えていたのでした。
同じ日に、ある中学校も訪問しました。校長との懇談も終わり、校門までお見送りしていただきました。その様子をちょうど下校する1年生3人が見ていたのですが、私のところに近づいてきて言いました。
「先生は誰ですか」
「あなたたちの校長先生の友だちです」
「そうですか。私たちの校長先生は話がとても上手で、言っていることがよくわかります」
「すばらしい校長先生で良かったですね」
中学生になり、人の話をしっかりと理解しようとする時期です。3人の生徒は、校長先生の話に新鮮な感動を覚えたのでしょう。
園から小学校へ、小学校から中学校へと環境が変わることは、大人が思っている以上に、子どもにとってはとても大きな変化です。大人が気づきもしないような、新しいものやことに出会うからです。小学校に入ると、安全な通学路を覚える、自分の靴箱を探して上靴に履き替える、きっちりとした時間割があって学ぶことが増える等々。また、中学校に入ると、教科ごとに違う担当の先生になる、他の小学校の子どもたちと一緒になる等々。環境が変化する中、不安と感動とが入り混じった複雑な心境で、新入生の学校生活がスタートするのです。
それを考えた時、園から小学校へ、小学校から中学校へと、学びの環境をスムーズにつなぐことがとても重要だと私は思ってきました。環境の変化がきっかけとなって生じる“わずかな心のずれ”は、その後の学校生活に少なからず影響を及ぼすからです。
では、どうすれば良いのでしょうか。そのヒントになるのが、奇しくも両校で出会った、笑顔あふれる生き生きとした新入生たちの姿です。
─── 新しく出会ったこの子とは、とても気が合う!
─── 初めて学ぶことには、もっと知りたい不思議な部分がたくさんある!
─── 始まったばかりの学校生活が楽しくて、ものすごく心がウキウキする!
このような一人ひとりの新鮮な“感動体験“が、園と小学校、小学校と中学校とをスムーズに“橋渡し”するひとつではないかと痛感します。なぜなら“感動体験”が、すでに“わずかな心のずれ”を払拭しているからです。感動が不安を打ち消すような心揺さぶられる“感動体験”を、特に新入生には多く積んでほしいと願っています。
感動は好奇心や探求心を生み、学力の向上につながるとともに、自己肯定感を高めるきっかけになるのではないでしょうか。だからこそ、一人ひとりの“感動体験”を大切にして、子どもたちの可能性を伸ばしていけるようにしていきたいものです。
春の花々に蝶々が飛んでいる校庭で、楽しく遊んでいる子どもたち。話をしながら笑顔で下校している生徒たち。先日訪問した小・中学校のこの光景は、まるで名画のようです。子どもたちが築く未来の世の中のようです。
~ 新緑輝く5月。子どもたちの瞳も輝いて見える日 ~ (勝)