応援したいという気持ち

 私はこれまでプライベートやビジネスの場面でコーチングを行ってきました。コーチングというのは、簡単に言いますと、言葉やイメージによるコミュニケーションによって、相手を勇気づけ、相手が自分の心の中にあるものに気づき、自発的に行動することを支援する技術です。

 このような経験の中で、「コミュニケーション」を単に言葉による会話だけではなく、「人と人が接する方法」だと考えるようになりました。「コミュニケーション」においては、「その人を応援したい」という気持ちがとても大切で、そのことを強く感じた経験についてお話したいと思います。

 数年前になりますが、9月のある日、40歳半ばの女性の方から今後どのようにしていけばよいかという相談がありました。その方は、仕事上で上司とうまくいかず会社を辞めてしまったということ、また、プライベートではシングルマザーで中学3年生の息子さんが不登校になっているということでした。いろいろとお話を聞いてみますと、仕事は自分で何とかできるということでしたので、息子さんの今後についてお話しすることになりました。

 日頃から息子さんに対して「ちゃんと学校へ行きなさい」と言っているが効果がなく、最近では会話も少なくなってきたという状態でした。私自身も息子が一時期は同じような状態でしたので、そんなに簡単に状況を変えられないことを理解していました。

 そこで、まずは10年後のありたい姿をイメージすることにしました。25歳になった息子さんが満面の笑顔で「お母さん、ありがとう」と言っている姿をイメージし、その気持ちを十分に味わってもらいました。そして、その気持ちのまま現状を眺めたときに感じたことは、「息子がいてくれることは自分にとって本当にありがたいこと。今一番大事なことは、学校に何が何でも行かせることではなく、自分と息子との関係を作り直すこと」ということでした。

 それからは「感謝」をもって息子さんを応援する気持ちで接して、3か月後には関係が相当改善できたというお話を聞いていました。そして、春に息子さんが高校に合格したとのお知らせをいただきました。

 お祝いのメールを送りましたところ、返信をいただき…、
 「長いトンネルの向こうは、桜並木でした」
この言葉にとても感動し、今でも忘れることができません。

 人と人が接する場面では、必ず何らかの「コミュニケーション」があり、相手への想いを交わしあうことで生活が豊かになると感じています。そして、「その人を応援したい」という気持ちがコミュニケーションの根底にあることがとても大切だと思います。(景)

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