異常な暑さに体調を崩しそうになるかと思えば、急に空がかき曇り、土砂降りの雨が降る─── 不安定な天候が続くこの季節ですが、校長先生をはじめ、教職員の皆さまにおかれましては“鍛えの夏”として、日々、研修や研鑽に励まれていることと思います。
さて、前回のコラムに続き、学校の未来に光を照らす、まさに”学校の太陽”のような校長先生をお二人ご紹介いたします。
お一人目は、大阪府八尾市立のある小学校の校長先生です。以前のコラム『さわやかな出会い』でご紹介した八尾市の浦上弘明教育長のご推薦を受けて訪問しました。その小学校は、生駒山を間近に望むのどかな地域の中にありました。広々とした校庭と豊かな緑に囲まれた、美しい教育環境が印象的でした。インターホンを押すと、真っ黒に日焼けした校長先生が、玄関までわざわざ出迎えてくださいました。
「暑い中を、遠路はるばる、よくお越しくださいました」
「いえ、こちらこそ、お忙しいところお時間をいただき、ありがとうございます」
挨拶を交わした後、校長室へとご案内いただきました。初対面とは思えないほど和やかな雰囲気の中で、小一時間ほど歓談のひとときを過ごしました。帰り際、校長室の隅に置かれていた芝刈り機がふと目に留まりました。
「これは芝刈り機ですね」
「はい、そうです。夏になると校庭の草がぐんぐん伸びますので、時間を見つけては自分で草を刈っているのです」
校長先生の何気ない一言が、私の心に深く響きました。多忙な校務に向き合いながら、その合間をぬって、猛暑の中でも校庭の整備に汗を流されている ── 。その姿勢に私は強く心を打たれました。日焼けしたお顔からは、校長先生が日々奮闘されている様子が伺え、感慨深い思いを抱きました。
お二人目は、大阪市立のある中学校の校長先生です。この校長先生とも初対面でしたが、子どもや教職員、学校づくりと、次々に話題が広がり、話の尽きることがありませんでした。やがて話が佳境に差しかかると、校長先生は学校の『グランドデザイン』を取り出され、力強くお話しになりました。
「本校では、非認知能力育成に重点を置いた取組を進めています」
「具体的には、どのような取組でしょうか?」
「非認知能力育成の第一人者である中山芳一氏(注1)を講師にお招きし、教職員とともに非認知能力の育て方について研究を深めています」
このお話を伺ったとき、私は次のように思いました。
─── 非認知能力とは、IQや学力テストでは数値化できない内面的な力を指す。やり抜く力、自己肯定感、協調性、忍耐力など、社会で豊かにたくましく生きるために欠かせない。その育成は乳幼児期が最も効果的であり、学童期にさらに伸ばすことも重要だ。加えて、それ以降の時期においても発達させることは可能とされている。したがってこの取組は非常に意義深く、注目されるべきものだ。
─── 校長先生自らが外部の著名な講師と折衝を重ね、招聘まで行っておられる。子ども中心の学校づくりのために、惜みなく汗を流されている。その真剣さは、まさに本物だ。
お会いしたお二人の校長先生は、地域こそ異なっていても、子どもを中心に捉えた学校づくりへの“熱き思い”を持っておられる点で共通していると感じました。その思いは、単なる言葉にとどまらず、自らの行動で示されていました。まさに「率先垂範」のお姿であると強く感じたのです。そして、多くの校長先生方も、きっと同じように「率先垂範」の姿勢で学校づくりに尽力されているに違いないと、思わずにはいられませんでした。
太陽は万物に「光」と「熱」を与え、命を育みます。同じように、校長先生方もまた、学校の未来を照らす「光」と、教育の現場に注ぐ「熱き思い」を胸に、日々奮闘しておられます。まさに“学校の太陽”のような存在であると感じます。
太陽の光と熱をたっぷり浴びて木々がぐんぐん育つように、校長先生方の「光」と「熱き思い」を受けて、教職員や保護者、地域の皆さんが生き生きと輝く。そして子どもたちは、豊かな心を育みながら、まっすぐに、正しく健やかに成長していく ─── そんな希望と感謝に包まれる、この夏です。
~ 真夏の太陽に、校長先生方の雄姿を重ねて思う日 ~ (勝)
(注1)中山芳一 氏:IPU・環太平洋大学 特命教授 ~ 「サクッとわかる ビジネス教養 非認知能力」(新星出版社、2025年4月、第2刷)より